ある夜、娘がはじめて「パパ、いや」と言いました。
1歳半を過ぎたばかりの頃です。それまではどんな時もパパに笑顔を向けてくれていた娘が、お風呂上がりにいつものようにパジャマを着せようとした瞬間、ふいに僕の手をはらいのけて、はっきりとした声で「いや」と言ったのです。
正直、頭が真っ白になりました。
それから1ヶ月、娘の「パパいや期」と向き合ってきた僕が、振り返って思う「やらかしたこと3つ」を、今夜は書き残しておこうと思います。同じように戸惑っているパパに届いてほしくて。
やらかし① 真顔で「なんで?」と聞いてしまった
初日のことです。「パパいや」と言われた瞬間、僕は反射的に「えっ、なんで?」と娘に聞きました。
これが、よくなかった。
1歳半の娘に、なんでもなにもないんですよね。理由なんて、たぶん本人にもわからない。「いや」と言いたくなった自分の感情に、ただ素直になっただけ。なのに僕は、まるで取り調べみたいに「なんで?」と詰めてしまいました。
娘は黙って、目線をそらして、ちょっと泣きそうな顔をしていました。あのときの娘の表情、今でも思い出します。
あの夜、妻に「子どもに『なんで』って聞いても、答えられないよ」と言われて、ハッとしました。理由を説明できる人にだけ通じる質問を、まだ言葉を覚えはじめたばかりの娘にぶつけていたんです。
やらかし② 妻に「ママが代わって」とすぐ頼んでしまった
2日目、3日目と「パパいや」が続いて、僕はだんだん心が折れてきました。
そして、4日目の朝。保育園の準備のときに「パパいや、ママがいい」と言われた瞬間、僕は妻に「ちょっと代わって」とお願いしました。妻は朝食の準備をしていたんですが、僕の表情を見て、何も言わずに代わってくれました。
でも、台所からエプロンの妻が出てきた瞬間、娘は満面の笑顔。あっという間に着替えが終わって、妻と楽しそうに保育園バッグを準備しはじめました。
その光景を見ながら、僕は台所で皿を洗っていました。
「あ、これはまずい」と思いました。毎回逃げていたら、娘は『パパは困ったとき消える人』になってしまう。そして、家事と育児のしわ寄せが妻に全部いく。
妻が「いいよ、私やるよ」と言ってくれるのは優しさだけど、その優しさに甘え続けるのは、夫としても父親としてもダサい。あの朝の皿洗いの間、ずっとそんなことを考えていました。
やらかし③ 「パパいや」を言わせないようにテクニックに走った
3つ目のやらかしは、いちばん恥ずかしい。
1週間目あたりから、僕は「パパいや」と言われないテクニックを編み出そうとしはじめました。
- 娘の前にしゃがんで、目線を合わせてから話しかける
- 「お着替えする?それともパジャマでもう少し遊ぶ?」と選択肢を渡す
- 娘の好きなぬいぐるみに「お着替え手伝ってくれる?」と頼んでもらう
正直、テクニックとしては悪くなかったと思います。実際、上手くいった日もありました。
でも、ある日妻にこう言われました。
「テクニックで『いや』を回避しても、娘の中の『パパいや』は消えないよ」
図星でした。僕は「パパいや」と言われたくなかった。だから、娘が「いや」と言わない動線を全力で設計していた。それは娘のためじゃなくて、自分が傷つかないためだったんです。
娘が「いや」と言うのは、自我が育っている証拠。それを回避することばかり考えていた僕は、娘の成長に向き合ってなかった。テクニックに走った1週間、僕は娘とちゃんと向き合えていなかったと思います。
いまの僕がやっていること
あれから1ヶ月。「パパいや」は今でもあります。週に2〜3回はあります。
でも、僕はもう「なんで?」と聞きません。「ママと代わって」もできるだけ言いません。テクニックで回避することもしません。
かわりにやっているのは、たった1つだけです。
「そうかぁ、パパいやかぁ」と、ゆっくり繰り返す。
これだけ。
そう言ったあと、娘の隣にしゃがんで、何も言わずにしばらく一緒にいる。すると、不思議なことに、5分くらいで娘のほうから「パパ、抱っこ」と言ってくれることが多いんです。毎回じゃないけど、2回に1回くらいは。
たぶん、娘は「いや」を否定されたり、回避されたりすることなく、ただ受け止めてもらいたかっただけなんだと思います。1歳半の娘にも、ちゃんとした感情がある。それを当たり前のように受け止めてあげるのが、父親の最初の仕事なのかもしれない、と最近思っています。
同じように悩んでいるパパへ
もし今、お子さんに「パパいや」と言われて、ちょっと心が折れているパパがいたら。
大丈夫です。僕も同じでした。たぶん、世の中のパパの何割かは、いま同じことで悩んでいます。
「なんで?」と聞かないこと、ママに代わってもらわないこと、テクニックに走らないこと。この3つを意識するだけで、子どもとの関係は少しずつ変わっていくと、僕は娘から教えてもらいました。
今夜も、娘は「パパいや」と言うかもしれません。でも、もう怖くないです。「そうかぁ」と受け止めて、隣にしゃがめばいい。それだけで、父親としての仕事はじゅうぶんなんだと思います。
明日もまた、家族3人で笑える日にしたい。それだけが、今の僕の願いです。

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